私には、ライザップの専属パーソナルトレーナーとして2年以上勤務した経験があります。直接担当した方の他にも、別のトレーナーが担当している方など、100名をゆうに超えるお客様のダイエット・筋トレを観察・指導してきました。
ライザップではCMの影響もありほとんどの方が痩せたいという目的で入会しますが、もちろん筋肉を付けたいとかマッチョになりたいという方もいらっしゃいました。
筋肉のつきやすさはある程度体質で決まっており、細身の男性の中には筋トレを行ってもなかなか筋肉がつかず途中で挫折してしまうケースも、残念ですがあります。ですが、筋肉をつけるための正しい方法を理解しさえすれば、最小限の努力で、最大限に筋肉を大きくすることができます。
この記事では、ダイエット・筋トレを現場の最前線で指導してきた私が「細身で太りにくい男性が自宅でのトレーニングで体を鍛える方法」をお伝えします。
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本記事の対象者は「男」で「ガリガリ(細身)」な「筋肉を太くしたい」人
対象者は、主に以下のプロフィールが当てはまる人です。
- 性別:男性
- 体質:ガリガリの細身、太りにくい体質
- 目的:見た目が良い体格になりたい、ムキムキになりたい、特に上半身を鍛えて肩幅を広くしたい
- 仕事(ライフスタイル):デスクワーク中心
- トレーニング経験:筋トレ初心者
- トレーニング場所:自宅
photo by istolethetv
要するに、こんな感じの人↑が対象です。
筋肉を大きくするためには、下記3つのテーマが重要となります。
- トレーニング
- 食事
- 生活スタイル
この中でも、本記事では「自宅トレーニング」でムキムキになる方法について書いていきます。
細身の男性が自宅トレーニングで上半身ムキムキになる方法〜トレーニング編〜
筋トレの大前提として知っておくべき「トレーニングの原則」
まず、具体的な方法の前に全てのトレーニングに当てはまる「トレーニングの原則」を押さえておきましょう。
これらの原則を知っているのと知らないのとでは、トレーニングの成果が全く違ってきます。
トレーニングの原則はいくつかありますが、特に重要なのは以下の2つです。
特に重要なトレーニングの原則①過負荷の原則

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トレーニング効果を得るためには、日常生活やスポーツなどで体験しているよりも強い負荷をかける必要があります。
例えば腕立て伏せを10回出来る人がもし5回でやめていたら、トレーニング効果はほとんどありません。要するに、限界ギリギリまで追い込むことが大切だということです。
漫画「ドラゴンボール」のサイヤ人のように、限界まで追い込むことによって回復した時に以前よりも強くなっている、という現象は地球人にも当てはまるのです。
限界ギリギリまで追い込むと言っても、フォームが乱れたり、反動をつけて無理やり動作を行ったりしてはいけません。鍛えたい筋肉へ負荷をかけられなくなってしまったり、故障につながったりするからです。
トレーニングの中級者になれば、あえて反動を利用して限界まで追い込むというテクニックもありますが、初心者の場合は怪我をしてしまうリスクがあるので、まずは反動を使わないように気を付けましょう。
特に重要なトレーニングの原則②意識性の原則

photo by Takeshi Hiro
体のどこの部位を鍛えているかということを意識しながらトレーニングをすることで、運動の成果が高まります。
例えば同じフォームで腕立て伏せをしていても、胸の筋肉を意識するか、または腕の筋肉を意識するか、もしくは全く別のことを考えているか、などによってトレーニングの効果はまったく変わります。
胸の筋肉を意識してトレーニングを行えば胸への効果が高まり、何も意識しなければトレーニングの効果は薄れてきます。
最近はボディビルの大会でも入賞しているお笑い芸人の、なかやまきんにくんが昔お笑いのネタで「おい、俺の筋肉!」と筋肉に呼び掛けていましたが、実はこれは筋肉を意識しやすくなり筋肉の成長にとって効果的なことなのです。
筋トレのポイント(反復回数、セット数、休憩時間、呼吸、トレーニングの頻度)
ここからは、筋トレの大事なポイントである以下のことについて解説します。
- 反復回数
- セット数と休憩時間
- 呼吸の方法
- トレーニングの頻度
これを知らないと、何も始まらないので。
①反復回数
1セットごとの適切なトレーニングの反復回数について。
筋肉を大きくすることが目的であれば、8回~12回で限界になるくらいの負荷が最も効率が良いことが、科学的に明らかとなっています。
ただし、この回数はある程度筋トレに慣れてからの目安のものなので、筋トレ初心者の場合は2週間~1ヵ月くらいは体を慣らすために、20回くらいで限界になるくらいのやや軽めの負荷で行うようにしましょう。
負荷を調整するためには、ダンベルの重量を変えたり、種目を変えたり、フォームを変えたりします。
筋持久力の向上が目的であれば、12回~20回で限界になるように、そして筋力向上が目的であれば4回~8回で限界になるように負荷を調整します。
②セット数とセット間の休憩時間

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筋肉を大きくするためであれば、1種目あたり3~5セットのトレーニングを行いましょう。
1~2セットでもしっかりと追い込めばある程度の効果はありますが、3~5セットを毎回追い込むとより大きなトレーニング効果を得ることができます。
セット間の休憩時間の目安は60秒~90秒です。
昔からトレーニングに関する様々な研究が行われていますが、このくらいの休憩時間が最も成長ホルモンが出やすく効果が高いということがわかっています。
時計やタイマーを活用し、休憩時間が長くなりすぎないようにしましょう。
③呼吸の方法

photo by Pierre Lognoul
呼吸は基本的には、重力に逆らって力を発揮する動作のときに息を吐き、逆の動作のときに息を吸うようにします。
【例】
・スクワットの場合
→しゃがんだ状態から立ち上がる時に息を吐き、しゃがむ時に息を吸います。
・腕立て伏せの場合
→肘を伸ばす時に息を吐き、肘を曲げる時に息を吸います。
特に気を付けることは、息を止めることがないようにしましょう。
次に呼吸の速さについてですが、吐く時が1秒~2秒くらい、吸う時が2秒~3秒くらいが目安です。
重量をおろすときには、勢いよくストンと落とすことがないように常に筋肉を意識して、重量をゆっくりとコントロールすることが大切です。
④トレーニングの頻度

photo by Ian Burt
トレーニング初心者であれば1週間に1度のトレーニングでもある程度の筋力向上は見られますが、より効果を出すためには最低でも1週間に2回はトレーニングをしたいところです。
可能であれば週に3回~4回出来ると理想的で、効果が出てくるのも早くなってきます※。
よく聞かれる質問で、「毎日トレーニングをしても良いのか?(しなければならないのか?)」というものがあります。
答えとしては、同じ部位のトレーニングは毎日行わないほうがいい、です。
例えば胸の種目である腕立て伏せをする場合は、毎日行うのではなく、月曜日に腕立て伏せをしたら、火曜日には背中の種目をする、そして水曜日か木曜日にはまた胸の種目を行う、というようなことです。
逆に言えば、毎日同じ部位をトレーニングできるということは、毎回のトレーニングでの追い込みが足りない、とも言えるでしょう。
1度のトレーニングで最大限に体を疲労させる場合は、週に2回の頻度が最適であると言われています
超回復と筋肉痛について

photo by Douglas Scortegagna
超回復とは、トレーニング後に48時間~72時間の休息を取ることで筋力水準がトレーニング前よりも上昇するというトレーニング原則のことです。
疲労が回復したかどうかを見極める一つの方法としては、筋肉痛の状態を見ることがあります。
必ずしも「筋肉痛になっていなければ筋トレの効果は全くない」、ということは無いのですが、筋トレ初心者の場合は筋肉痛は起こりやすいです。
だからトレーニング初期の頃で、筋肉痛や疲労感が全くなくトレーニングをした部位のストレッチをしても張りも全く無いという場合は、追い込みが足りなかったという可能性が高いと言えます。
各部位(上半身)の筋トレ種目について
トレーニングの原則やポイントを踏まえたうえで、具体的な筋トレ種目についてお伝えします。
今回のモデルケースは、ガリガリの体型で特に上半身の見た目を良くしたいということが目的なので、
胸と背中をメインに鍛えられる基本的なトレーニングをご紹介します。
また自宅でのトレーニングという設定ですが、最低限の器具がある方が効率よく鍛えることが出来るので、ちょっとした器具を用いたトレーニングもいくつか紹介していきます。
①胸のトレーニング

いわゆる大胸筋は、痩せている男性がもっと鍛えるべき部位で、また変化が出やすい箇所の一つです。
胸の種目は大抵、肩や腕の裏側の筋肉(上腕三頭筋)も同時に鍛えることが出来るので、胸の種目を行うことで効率的に見た目のよい体型になることが出来ます。
腕立て伏せ
自宅で道具もなく出来て、しかも効果も高い代表的な胸のトレーニングは、腕立て伏せです。
おそらく誰でも1度は腕立て伏せを行ったことがあるとは思いますが、以下にポイントを2点紹介します。
注意するポイント1:目的に合わせて脇の開き具合を調整する
脇を開くと胸に効きやすく、脇を閉めると上腕三頭筋に効きやすい、という性質があります。
見た目がたくましい体になることが目的であれば、まずは胸板を厚くするために胸に効きやすいフォームでやるのが良いでしょう(つまり脇を開いたフォーム)。
腕を太くしたいというのであれば、脇を閉めて二の腕に効くように腕立て伏せを行いましょう。
注意するポイント2:体幹を一直線になるよう意識する
頭から足が一直線になるように意識することで、体幹も同時に鍛えることが出来ます。
以上の2点を踏まえて、まず今現在の体力で、腕立て伏せが何回出来るかやってみましょう。
その回数によって下記の3つのレベルに分けて、トレーニングの進め方を変えていきます。
A:5回も出来ない。
B:5回~11回出来た。
C:12回以上出来た。
Aの場合
もし5回も出来なかった場合は、まずは膝をついた状態の簡単な腕立て伏せをやります。
このフォームで、回数は限界がくるまでやりましょう。
最初の頃は90秒の休憩で3セットを毎回限界の回数までやっていきましょう。
週に2回は出来ると良いですね。
ポイントは毎回のトレーニングで、自己記録更新の回数を狙うということです。
過去の最高記録よりも1回だけでも多くやることを目指していきましょう。
日が経つにつれて回数がどんどん増えてくるので、体力がついてきたなと感じて来たら、また通常の腕立て伏せが何回出来るか計測してみましょう。
そして回数が増えていれば、次のステップに進みます。
Bの場合
もし5回~11回出来た場合は、通常の腕立て伏せで12回以上出来るようになることを目指していきましょう。
ポイントは、やはり過去の自己記録よりも1回でも多い回数を目指すということです。
Cの場合
12回以上出来た場合はフォームを変えて、より負荷が高い腕立て伏せを行います。
まずは、足を椅子や机など高い位置に置いた状態で行います。
これでも12回以上出来るようになったら、次は「ジャンピング腕立て伏せ」を行います。
やり方は、肘を伸ばす時に勢いよく床を押し、肘が伸びた状態の時に手が床から一瞬離れるようにします。
更にこれでも12回以上できるようになったら、次は「クラッピング腕立て伏せ」を行います。
クラッピングとは、拍手のことです。
ジャンピング腕立て伏せと同じ要領で、勢いよく床を押し、今度は空中にいる間に両手で素早く拍手をします。
これが簡単に出来るようになれば、筋トレの中級者レベルになってきます。
更に強度を高めるには、クラッピング腕立て伏せの拍手を体の全面ではなく、背面で行うという「バッククラッピング腕立て伏せ」というやり方もあります。
これが出来るようになった上級者レベルと言えるでしょう。
②ディップス
通常のクラッピング腕立て伏せが12回くらい出来るようになったら、更に負荷をかけることが出来る「ディップス」という種目を取り入れます。(もっと早い段階でも充分取り入れることは可能です)
ディップスを行うには、ぶら下がり健康器やチンニングスタンドという器具を使います。
これも腕立て伏せと同じ要領で、回数が多くできるようになってきたら負荷を高めていきます。
具体的には専用のベルトかリュックサックなどを使い、バーベルのプレートやダンベルなどの重りを持って負荷を高めます。
背中のトレーニング

逆三角形のカッコいい体にするためには、背中のトレーニングは欠かせません。
また胸と背中はちょうど体の反対側に位置し逆の動きをする関係なので、この胸と背中をバランスよく鍛えることが見栄えを良くするためにも非常に重要になります。
懸垂
背中のトレーニングで特にお勧めの種目は、懸垂です。
自宅で懸垂をするためには、大抵はディップスの時に紹介した、ぶら下がり健康器やチンニングスタンドという器具を使う必要があります。
この器具はインターネットで数千円で購入出来るので、是非手に入れておきましょう。
ちなみに、この器具は上で説明した「ディップス」にも対応しています。
懸垂を行う際のポイント
- 持ち手:順手
- グリップの位置:肩幅よりもやや広め
- 呼吸:体を引き上げるときに息を吐き、下げるときに息を吸う
- スタート位置:肘が毎回完全に伸びるまで体を下げる
- ゴール位置:顎の位置とバーが同じ高さになるまで(理想)
懸垂では力こぶの部分(上腕二頭筋)も使うのですが、主に使うのは背中の広背筋です。
水泳選手や体操選手、ブルース・リーなど、逆三角形の体になっている人が発達している背中の大きな筋肉を意識して行います。
鉄棒などにぶら下がっている時に、脇の下の部分が伸ばされる感覚が出てくると思いますが、その筋肉が広背筋です。そこを意識しながら、懸垂を行ってください。
最初は広背筋が効いているという感覚を得ることは難しいかもしれませんが、広背筋のストレッチなども取り入れていくと徐々に意識しやすくなってきます。
まずは腕立て伏せと同じように、現時点で何回出来るか挑戦してみましょう。
フォームは、一定の姿勢を維持しながら懸垂を行います。
その姿勢を維持しながら行える回数によって下記の3つのレベルに分けて、トレーニングの進め方を変えていきます。
※懸垂の方が腕立て伏せよりも強度が高いので、回数は腕立て伏せの時とは変えています。
・A:5回も出来ない。
・B:5回~19回出来た。
・C:20回以上出来た。
Aの場合
5回も出来なかった場合は、次からは肘を完全には伸ばさず、可動範囲が狭いやり方で懸垂を行います。
またバーの持ち方を順手ではなく逆手にすると、少しやりやすくなります。
このやり方であれば回数がもっと多く出来るようになるので、まず10回以上を目指していきましょう。
そして時々理想のフォームで挑戦し、より多く出来るようにしていきます。
もしこのやり方でも懸垂がほとんど出来ないようであれば、斜め懸垂という種目に切り替えます。
これは脚が床についた状態で、体を45度くらいの角度で後ろに傾け斜め上を向きます。
ここから胸がバーにつくように体を引き上げます。
この種目は、ぶら下がり健康器では難しいので、近所の公園の低い鉄棒などを見つけてやってみましょう。
Bの場合
5回~19回出来た場合は、腕立て伏せと同じように以前の自己記録よりも1回でも多い回数を目指す、というやり方で20回以上出来るようになることを目指していきましょう。
Cの場合
20回以上出来た場合は、既に中級から上級者と言えるでしょう。
上記の胸の種目のディップスと同じ要領で、専用のベルトかリュックサックなどを使い、バーベルのプレートやダンベルなどの重りを持って負荷を高めていきます。
このレベルになれば、「ある重さで13回出来たら、少しだけ重量を増やしてまた13回を目指す」、ということの繰り返しにより更にカッコいい体になっていきます
更にレベルが上がれば、片手懸垂にも挑戦してみましょう。
以上、胸と背中を鍛える種目を紹介してきました。
これらの種目だけでも胸と背中だけでなく、腹筋や腕や肩も同時に鍛えられているので、しっかりと行えば上半身がバランスよく鍛えられて、カッコいい見た目に変化していきます。
それぞれ週に2回ずつ、例えば日曜と木曜日に胸の種目、火曜日と土曜日に懸垂というサイクルでトレーニングが出来ると理想的です。
更に体力と時間に余裕があれば、脚の種目や、腹筋、腕、肩などをピンポイントで鍛える種目も取り入れると良いでしょう。
まとめ

いかがでしたか?
今回は「トレーニング」に着目して、運動習慣のないガリガリな男性でも上半身を鍛えられる方法を基礎から解説しました。あまり目新しい情報とは思えなかったかもしれませんが、この記事で紹介した内容をきちんと守ってトレーニングを行えば、2-3ヶ月ほどでほぼ確実に効果を実感できるはずです。
あと必要なのは、トレーニングと向き合う覚悟を決めるだけ。
頑張ってください。
次回以降、筋肉を太くするために意識すべき「食事内容」と「生活習慣」について解説します。
それではまた!
ライザップなら2ヵ月で理想のカラダへ。